【コラム】「トイトレ」(高橋歩美)

あくまでもこれは我が家の事例です。

 

5歳7か月の息子。この1〜2週間でやっと家庭で自分からトイレに行きおしっこをすることができるようになりました。

これまで幼稚園や療育施設では、集団でトイレに行く時間を設けていたり、定時排泄で規則的に促してくれていたりして、周りの人を見て学んで動く息子にとってはわかりやすく、かなり前からトイレの成功率は上がっていたようでした。

園では本当に尿意がなく、行きたくない場合には大きな声を出して嫌がっていると先生に教えてもらっていましたが、自宅では行くことすらしようとせず、ひたすらオムツでしていました。

進学をあと1年後に控え、排泄の話題がキーになることも増えてきました。この辺りでやっと私も本腰になって排泄について見直すことにしました。改めて考えたら、家庭で全然何にも手立てをしてないからできるわけがないということに気づきました。

幼稚園でできるのは定時排泄を繰り返してきたから。

家庭でできないのは家庭で教えようとしないから、この子は「園ではトイレ。家庭ではしなくてよい」そう覚えただけでないかとすごく当たり前のことにやっと気づきました。

排泄は個人差があります。それは姉二人で経験していました。

長女が完全にオムツが取れたのは4歳手前。次女は2歳前には自立していました。

この二人の違いの一つは保育所の利用。幼稚園入学までほぼ家庭で見ていた長女と、1歳前から保育園に預けられた次女との差は歴然でした。二人の排泄の自立は保育所の先生がしてくれたようなものでした。

つまり私は、二人の子育てをしてきたにも関わらず排泄の自立の初心者でした。そしてそこに自閉症で普通の子育てではうまくいかないであろう息子がやってきて、初めて排泄と向き合うことになりました。

とにかく園と同じようになってみよう。オムツを辞め、布パンツで過ごすことにしました。

部屋を汚されたくないので、私も必死で定時排泄に付き合いました。

朝起きてトイレに行くのも初めはすごく抵抗しました。もっと小さい時から習慣づけていたらこんなことにはならなかったのにと後悔もしましたがそんなこと言っている場合ではありません。

毎朝、鮮魚のように暴れる息子を抱きかかえトイレに座らせました。

すると1か月もしないうちに大人しくトイレへ行くようになり、それから少しした頃、私が1日だけうっかり忘れていた日、自分からトイレに入っていきました。

何が起きたのか。私はその様子を見ながら「え?」と思いました。たまたまなのかと思いましたが、その後も朝起きたら一人でトイレへ向かうようになりました。

すごい!!と何度もトイレで抱擁し、褒めまくりました。

それでも日中は自分からトイレへ自発的に行くことはなく、定時排泄を促し続けました。するとだんだんとトイレに行く前にモーションをしていることに気づきました。

息子の場合はちょっと前かがみになったり、パンツに手を入れ出したり、もぞもぞする。今まで見ようとしてなかったから気づけていなかっただけで彼はずっと合図をしていたと思います。そのタイミングで促すと、すっとトイレへ行き、成功することが増えてきました。

そんなある日、私がまだだろうと思い、息子を1階に残して2階で電気の付け替えをしていました。

すると、聞いたことがないような泣き声が聞こえてきました。

急いで降りてみると、さっき交換したばかりのラグの上で、大泣きしながらお漏らし真っ最中の息子がいました。

今まで漏らすことは何度もあったけれど、泣きながら漏らすのは初めてで。

正直どっかがいたいのかと思いましたが、その時横にいた姉に

「ママがかなくんをトイレに連れていかんかったけんいかんのよ!!かなくん漏らして泣きよんやん!!」と怒られました。

はっとしました。

正直、漏らしたくないとか、漏らしたらいかんなんてことまで息子が考えられるレベルにあるとは思っていませんでした。でも姉たちに言われると、この子がトイレで排泄をしようとしてきているのはそういった思いをちゃんと持っていたのではないかと思えたのです。

息子はしばらくしゃくりあげて泣いていました。怒られると思ったのかなそんな風に思ったりもしながら、すぐに着替えさせ、びしょ濡れになったラグを片付けました。

その間もずっと泣く息子。申し訳なくなって「いいよ。気にしなくていいよ。ママが遅かったんよ。ごめん。」そう言いながら私が泣きそうになっていました。

トイレに行きたくても自分ではまだ行けない。朝は行けても昼間は行けない。こじつけになるかもしれないけれど、この子はそうなんだと。ならきちんと連れて行ってあげるのが私の仕事。そう強く思って、仕切り直そうと思った翌日から、日中、息子が自分からトイレに行くようになりました。

昔、息子が3歳くらいの頃、昼夜問わず隙を見ては家から飛び出していて、それが私にとってはものすごいストレスで夜もあまり眠れなくなりめまいで倒れて寝込んだことがありました。

その時にも、寝ている私の横におままごとのご飯を持ってきて両手を合わせてくれたことがありました。「そんなこと今まで一度もしたことないのに。君のせいでママは寝込んでるんだよ!」そんな風に思ってました。

その翌日に家族で防犯ブザーを買いに行きましたが私は歩くのもようやっとで、しばらく思うようには動けない期間が続きました。いつもは追いかけてくるママがずっと寝たまま起きてこない。息子なりにきっと思う所があったのだと思います。あの時も、ブザーを買って取り付けたのに結局その後、飛び出しはなくなり使うことはなかったのです。

あの日のことと、このトイレのことがピンっと繋がった瞬間でした。この子はしっかり考えて行動をしている。

自閉症だから、障害があるからわからないこともあるとは思う。けど、だからと言って気持ちがないわけでも考えてないわけでも絶対にない。それをうまく表現できないだけで、この子はしっかり自分の思いも考えも持っている一人の人格である。

「ママ、なめんなよ」

そんな風に戒められたような気がしました。

今回の我が家の排泄の件に関しては、母としての私の怠慢だったと思っています。

3人目にしてやっと排泄の自立に向き合うことができました。それでもまだまだ完全自立はできていません。今やっとおしっこがなんとかなりだしたところで、まだ便の始末という大きな目標が残っていますが、母として未熟な私を育成するために、彼が生まれてきたのかなと改めて感じる出来事でした。

 

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高橋歩美

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