【コラム】一息ついて、立ち止まって、周りを見ると見えてくるもの。
第三回は高橋さんのお友達ママさんの寄稿。
「【コラム】発達障がいの息子の園選びと入園準備(高橋歩美)」
「【コラム】行事の参加~「正解」って何でしょう~(高橋歩美)」
※今回は高橋さんではなく、お友達に寄稿していただきました。連絡先などは高橋さんのものを記載しております。
私には5歳の息子がいます。
この春に年長になりました。
自閉スペクトラムの診断を受けています。
発達に疑問をもったきっかけは1歳半を目前にしたころ、かかりつけの病院で
「ちょっと言葉が遅いかな。多分1歳半健診でひっかかると思う」
と主治医に言われたことでした。
第1子であり、右も左もわからないままの育児。
言葉が遅いなんて考えたこともありませんでした。
でも確かに話さない。
指さしもしない。
案の定、1歳半健診では何もできず
「2歳になる頃にまた連絡させてくださいね」
と言われました。
そして、主治医から
「どんどん言葉をかけるように」「広場などにでかけるのもいいのでは」
とアドバイスを受けたこともあり、地域にある子育て支援広場にかよう日々が始まりました。
買い物や散歩程度で、ほとんど自宅で過ごしていた私にとって、子育て広場は緊張しましたが、先生が話をきいてくださり、とても心が軽くなったのを覚えています。
家にはないおもちゃ、時折あるイベント。
息子は楽しそうで、思い切って飛び込んでよかった!と思いました。
2歳を目前に主治医から紹介された療育施設に通うようになり、
翌月から子育て広場で出会った方に紹介された他の療育施設に通園を開始しました。
が、性格上、「やらなきゃ」と思うと一直線の私。
雨の日も風の日も、広場通い。
散歩しながらたくさん話しかけました。
主治医から「保育園にいれたら刺激があるかも」といわれたこともあり、未満児から幼稚園を利用することも考え、園庭開放にも通いました。
行かないとこの子のためにならない。
とにかく何かしなきゃ。
発語、発語!
思い返すと、かなり必死だったと思います。
2歳になって、ようやく発語はみられてきたものの、まだまだ。
広場では「かして」「どうぞ」ができない。
言葉がうまく伝えられないために手が出てしまう。
以前自分の遊びを邪魔された、と認識した相手は自分のテリトリーに近づくだけで何もしていないのに押す、かみつく。
トラブルが絶えなくなりました。
親子にとって楽しかった広場通いは、
息子に対して「だめよ」「ごめんなさいは?」
そんな言葉かけばかり。
私自身も気分転換から、ひたすら頭を下げる苦痛なものにだんだん変わっていきました。
そして同時に、家からの脱走、飛び出し
包丁がリンゴに突き刺さっている・・・などなど。
危険行動も散見されるようになりました。
あちこちロックをかけるなど対策をとりますが、
それでもいたちごっこですぐ解除され、
目を離せない日々。
自閉スペクトラム症と診断されたのもこの時期でした。
そしてダメ押しの事件が起こりました。
翌年の入園を考えていた幼稚園で在園児に手を上げてしまい
「もう一年トレーニングして、年少からトライしませんか」
といわれたのです。
他の候補だった幼稚園にも
「希望されるのであれば受け入れはできますが、診断もついているのだから、そろそろ受け入れるべきじゃないですか」
と言われました。
まさか断られるなんて考えてもいませんでした。
頭は真っ白になり、大泣きしました。
でも、ふと思ったのです。
息子のためと思って始めた広場通いなのに、
息子は楽しんでるのかな。
最近笑ってる?
私はこの子とちゃんと向き合っているのかな?
そもそもどうして幼稚園に入れようと思ったのだっけ?
自問自答を繰り返しました。
そして、
一旦休もう。そしてもう一度息子とちゃんと向き合おう。
と決めたのです。
同年代の集団に入らないと学べないこともある。
そう考えたので広場へ行くのは余裕のある時のみにしようと決め、回数は減らしました。
自宅にいるときには一緒におやつやご飯を作ったり。
散歩に行くのも好きなショベルカーを満足いくまで眺めてみたり。
公園で思いっきり体を動かしてみたり。
何に興味を示すかわからないから、とにかくトライ!
一緒に家庭菜園も始めました。水やりが日課になりました。
今まで以上に親子の時間が充実していきました。
3歳になる年には、もう一つ療育施設を追加し、翌年は毎日通園の療育施設にするのか、地域の幼稚園にするのか、この子にとって一番よい環境を模索することにしました。
この1年は、言葉も増え、こだわりや予定変更時のかんしゃくなどの問題はもちろんありましたが、めざましい成長をみせてくれました。
息子のことを理解して、快く受け入れてくれる幼稚園も決まり、今は幼稚園に通いながら療育施設を併用して楽しく生活しています。
宇宙が好きです。パズルも好きです。料理するのも食べるのも好きです。
図書館も好きです。体を動かすのも大好きです。
あの時、無理して入園していたら、きっと今の生活はなかったと思います。
視覚優位という特性を活かし、
気持ちを伝えるカードをお守り代わりにカバンにつけたり、
手順や物品リストなどを作成して幼稚園のお支度、片付けをすることで、
「苦手なことはあるけれど、こうすれば僕でもできるんだ」
という自信がつくように、
そして、ゆくゆく成長してから自己管理ができるようにと願い関わる毎日ですが、
まだまだ課題はたくさんです。
今年は年長。
小学校をどうするのか、すごく悩んでいます。
いっぱいいっぱいだった頃を振り返ると、
息子がどうしてそうしたのか気持ちに寄り添ったり代弁したりする余裕もなく、否定的な言葉掛けばかりで息子はストレスだったでしょうし、つらかったと思います。
母親の怒った顔、困った顔、悲しい顔ばかりで、きっと笑っている顔を見ることも少なかったのではないでしょうか。
無理をするのをやめた後は、私も少し心に余裕ができ、言葉掛けも変わり、笑顔も増えたのかな。
息子も少し落ち着いたように感じました。
親ですから、子どものためにいろいろ悩み、考えると思います。
悩んでいるときは行き詰まり、どうしようもない気持ちになることもあるでしょう。
私自身、今でもそのような状況に置かれることも多いです。
実母に「ケセラセラよ」と言われても、「そんなこと言われても!」と反発したことも数知れず。
ですが自分のイライラ、疲弊した心は子どもにも伝わり、悪循環になりかねません。
困ったときは相談できる誰かに相談してほしい。
一旦立ち止まってほしい。
自分自身にもほっと一息できる時間を作ってほしい。
そう思います。
息子は、一見するとわかりにくい発達障害をもっています。
初めて会う人にはなかなか理解してもらえません。
今後も彼の凸凹した特性で苦労し悩むことも親子ともども多いと思います。
けれど、環境さえ整えば、息子が力を発揮する場面は必ずあるとも思っています。
「今」が、どんな形であれ将来につながっていると信じ、
周囲の人たちの力を借りながら、息子にとって一番よい方法を模索していけたらなと思います。
<お知らせ>
アンケートの締め切りを4月末まで延長しました。ご協力よろしくお願いいたします。
①発達障がい児(発達に不安)を抱える保護者向け
https://forms.gle/eoL1KU4c1PRvj7U57
②障がい児に関わる(関わっていた)教育関係者・支援者向け
https://forms.gle/yAwjW8ds2nguqsTt8
③①、②以外の子育て中(子育てをしてきた・するかもしれない)方向け
※今回は高橋さんではなく、お友達に寄稿していただきました。連絡先などは高橋さんのものを記載しております。
高橋歩美