【コラム】「生きる仙人」(高橋歩美)
「生きる仙人」
教育相談が終わりましたね。今年受けられた皆様はどのような感想を持ちましたか?
実は先日、以前こちらでも協力をお願いした教育相談に関するアンケート結果を元に教育委員会の方や関係部署の方々とお話をする機会を設けていただきました。
みなさん真摯に聞いてくださり、現状を知っていただく機会となりました。環境設定を見直してくれたり、すぐに大きくは変わらなくても、今年受けた皆さんが少しでも「話せてよかった」と言える場であったなら一歩前進だと思います。
今回のようにアンケートを市が中心となってしていけば、必ず前進するのではと感じ、その点も改善してくれることを願っています。
ご協力いただいた皆様本当にありがとうございました。
さて、1学期が終わりました。支援学校判定だったけど地域の支援級に進んだ息子。
最初の難関、運動会。個人走、走り切りました。ダンス、満足に踊れはしなかったけど、その場に入れた上に、隊形移動も友達の協力で難なくこなしました。
そして開会式、閉会式。運動会で一番見通しが持ちにくく、参加が難しいこの演技(笑)
きょろきょろしながらも自分の場所にいることができました。
この運動会を超えた後、生活における「自分の立ち位置」が少し見えてきたのか、朝礼でも途中退席をせず参加できたり、交流級の授業にも1時間い続けることが増えてきたりしたそうです。
自分が求められていることが何なのか。今何をすべきか。それをスケジュールでもなく、絵カードでもなく(もちろんどちらも使っていますが、手段の一つで目的ではありません。)、目と耳と心で感じ、フルで五感を使って生きることを以前よりも学んだのだと思いました。
運動会以外に、私が小学校へ行って一番良かったと思うこと。
それは「信じることの大切さ」です。
私は、この子はいつか字を書けるようになると思っていました。でもそれが1年生の間には無理だと思っていました。
何の根拠もありませんがそう思っていました。でも学校の先生たちは違いました。当たり前に支援級での授業で、文字や数字を書き、読むことを息子に教えてくれました。
息子は、平仮名や数字のなぞりプリントや数字の点つなぎを毎日連絡袋がパンパンになるほどやって帰ってきていました。
家での宿題用にと学校が準備してくれたプリントはディでこなして帰ってくる。家で試しにプリントを広げると、すっと寄ってきて鉛筆を持ち、字を書く。
「もうないの?」という目で私を見て、ストックした使用済みのプリントの中にやり終えてないものはないかと探す。
こんな姿を誰が想像していたか。そして、段々となぞりでなくても、字を自分で書くようになりました。以前から書ける文字はありましたが、自分の名前の3文字を必死で思い出しながら何も見ずに書くのです。「なんか違う」を感じるのでしょう。
自分が書いた文字を見ては首をかしげながら書き直す。その文字を書く様子はドラえもんの絵描き歌のようです。
書き順はバラバラ。じっと見ていると最後まで行って形ができあがり、はっと気づかされる。文字だ、と。
この子にこんな力があるなんて私は思っていませんでした。だって毎日泣いて叫んでしていたから。だけどそんな息子に色眼鏡を掛けずに先生たちが接してくれたおかげで彼は今
私が想像していたよりもはるかに速いスピードで字を習得しようとしています。
息子がそこまでできたのは、教え方が良かったのもあると思います。でも、私は、息子の力を信じ続けてくれたおかげだと思っています。
言い過ぎかもしれませんが、母より家族よりも、支援してくださる周りの友達、家族、先生たちが息子を愛し、信じてくれていたと私は思います。「もうできなかったらいいですから。」どの場面でも私はみんなに迷惑をかけないようにとつい口に出してしまっていました。
でもその度に「いやいや、きっとできますから。任せてください。」そう言ってもらえたこと。その会話を息子はじっと聞いていたんだと思います。
「ぼく、できるよ。」
またまた母は、我が子を見くびっていたのだと反省しました。母としても支援者としても、子どもたちから学ばせてもらうことは非常にたくさんあります。
私は我が子は『生きる仙人』だと思っています。自分にはないものがありすぎて、日々学ばせてもらっている存在です。
そんな折に知ったノッポさんの「5歳が絶頂」のお話。
https://www.tokyo-jinken.or.jp/site/tokyojinken/tj-30-feature1.html
兼ねてより、子どもたちを見ていて「私が教えられることはない」と思ってきましたが、やっぱりなかったんだな。と感じました。
だからこそ、私たち大人は子どものときの気持ちを忘れない様に日々勉強していかなければならないと切に感じました。よかったらノッポさんの書籍もありますし、ネットには他にも色々お話もあるので読んでみてくださいね。
これを読んでいる方の中で、昨日の教育相談で思うようにいかなかったり、普段のお子さんのことで悩んでいる方、目の前にいるその子を見てください。きっとあなたにしかわからないその子の良さに気づいているはずなんです。
ただ、それがうまく説明できなかったり確証が持てなかったり。今の環境の中で周りと比べるなとは言いません。ただ、その子の本当の良さを認めてくれる場所はどこなのか。誰なのか。その子一人じゃ難しくても家族が協力すれば見つけられる。
一人が批判しても、次の人は違う意見かもしれないし。10人同じことを言っても、一人は違うかもしれない。その一人を信じたいと思う気持ちが芽生えたら、どうしてそう思うのか、自分の胸に手を当てて考えてみる。そのためにも、相談し話し合う場が本来の教育相談であると私は思っています。あの1回の機会で適切に判断なんてできません。
だからこそ、ここからは家族と進学先とでゆっくりと話し合うことが大切であると思います。大切なのは、この子に本当はどんな子になって欲しいのか。
それだけは忘れないで欲しいと思います。
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高橋歩美