【コラム】生きるということ(高橋歩美)
約3か月ぶりの投稿です。
自閉症スペクトラムで、療育手帳Aの息子は、無事認定こども園を卒園し、地域の小学校の支援級に入学をしました。(卒園式や、入学までの流れについてはまた後日書きます。)
卒園に際しても、友達や先生方、保護者の皆様に感謝しかなく、感動しっぱなしでしたが、そこから怒涛の準備をしての入学。
2人の姉の入学の時、準備なんてせいぜい、文房具、月セット袋、制服、体操服、給食着、算数ボックスの氏名シール貼り…そんなもんでしたが、息子の入学までの準備はこういった必要な物の準備だけでなく、関係各所との連携を図ることもプラスされ、そこが一番大変でした。
息子が過ごしてきたこれまでの時間と、本人の特性と家族の意向を少しでも理解してもらいたくて、学校と放ディと相談支援員さんも交えて年明けから何度かケース会も開いていただきました。
登校したら支援級と交流級(在籍するクラス)どちらに行くのかから話し合い、教室に入ったら、荷物をどこに置くか、順番はどうするか、給食や掃除はどうするか、教材はどうするか(購入するかしないか)など、認定こども園での朝の支度の流れを考慮しつつ、ゆくゆくは交流級に上がった時にも応用が利くように両方に対応できるよう、本当に具体的に先生たちと考えました。
その話し合いの上で、本人にこれから学校では何をするのか見通しを持たせるために、一週間のカレンダーや連絡帳、朝の支度、帰りの支度、こちらが伝えたいことを視覚的に伝えられるように、また言葉がない息子が意思を伝えられるように学校と相談しながら、支援グッズの作成については母親である私が準備をさせていただきました。
これには、賛否両論あるとは思いますが、私は、自分が現場の教員であることもあり、これ以上学校の先生の負担を増やすことはできないと判断した上での地域の選択でした。
ニュースなどでも取り上げられていますが、教員の人員不足の問題は目を背けることができないくらいに大きな問題になっています。元々仕事量も多く、すべての先生に特別支援の知識を求めたくても、そうしたいと現場の教員が願っていても、日々、子どもたちの支援で手いっぱいで学ぶ時間がないのです。
でも、特別支援教育の分野に関しては、昨今の幼児教育段階での療育の普及の推進により、保護者にできることがもっとあるような気がしていました。
どうすれば学校現場の負担を軽くすることができるのか。これからの時代は、学校と地域の人間が協力して、本当の意味でのコミュニティスクールを作っていくことが求められていると思います。
支援の方法ついて、学校や放ディの先生にもちろん相談しますが、自分の子に必要なグッズなどは、家庭でも使っているのであれば、保護者が準備できる。息子の発育レベルで地域を選ぶとするならば、そこまでしての入学でしかうまくいく方法はないと、私は判断して今回地域を選びました。
無事に入学式ができるのか、毎日通うことができるのか。心配はたくさんありましたが、話し合いや準備が進むにつれ、私に見通しが持て始め(笑)、不安よりもワクワクが日に日に増していきました。支援が必要なお子さんには、入学前に先生方との顔合わせの機会も提 供してくださっており、交流級の先生とも事前にお話をさせていただく機会も設けていただくことができ、お互いの安心材料になったように思います。
これだけやってダメなら何したってダメってゆうところまでやりきっていたので、入学式も私は保護者席から見守りました。
みんなと一緒に入場。
今年は来賓も多く、挨拶の時間も非常に長く、だんだんと大きな声も出てしまい、途中先生と一緒に退席しましたが、最後の退場は、クラスのみんなと一緒に行うことができました。
「どうなった場合、退席するか」についても事前に先生と話し合っていたため、大きい声が出てしまったことへの周囲への申し訳なさはありましたが、息子が退場することに対して何の不満も心配もありませんでした。
任せよう。
そう思えるまでに、意見を伝えてきたし、準備もしてきて、それに対して周囲の方々も理解し協力をしてくれていたので、不安はあまりありませんでした。相互理解、対話と共感を十分にすることの大切さを身をもって感じました。
ただ、事情を知らない方からすると、あの入学式での息子の様子は、
「あの子どしたん?大丈夫?」
にしかなりません。
参観日には、有難いことに同じクラスの方に息子の話をさせていただく時間も設けていただきました。
みんなに理解をしてもらうことは難しい。だけど、理解してもらえるよう伝えていくことは私にしかできないし、逆に言えば、私にできることはそれだけです。
息子の学校は支援学級の生徒は登下校に保護者の付き添いが必須となっています。
最初の頃は泣きながら登校していました。その息子に同じ班の子が声を掛けてくれています。
学校に着くころには笑顔になっていて、私との別れ際なんて1ミリも反応しないくらい安心しきっています。だから、朝泣いていても、「学校に着いたらへっちゃらなんよ」という話を登校班の子にしながら歩いたりもします。
理由が分からず泣いていたときには、同じクラスの子が保護者を通じて私に教えてくれたこともありました。「どうして泣いているのかな?」と親御さんに相談していたそうで、親御さんは、お子さんがそうやって悩んで話してくれたことがうれしかったと伝えてくれました。
休み時間には、姉たちやクラスの子たちが誘いに来てくれ一緒に遊んでいるという話や、給食当番の牛乳配りでは、友達が息子が配る分を残してくれているという話も聞きました。
小学生とは思えない、さりげない配慮を感じる場面を連絡帳から伝えてもらったり、毎朝チラッと息子を見てくれている視線を傍で感じ、大人の私たちは子どもたちから学ぶべきことがかなりたくさんあることを毎日肌で感じていて、大変さよりも、幸せを感じる日々を過ごさせてもらっています。
課題はたくさんで、向き合わなければならないことは山ほどあります。
ただ、純粋に思うのは、息子を育てているからこそ周囲の人の優しさと今ある環境に感謝ができて、生きることの本当の意味を考えさせられています。姉2人の子育てのその一瞬一瞬は大変だったし、今でも大変なことはあるけど、本当の意味での子育てに向き合っているのは息子のときだと言うほどの大変さと疲労感と感動と幸福感を毎日感じています。
さて、6月に入ると教育相談の申し込みが始まります。
今回、来島会の子育て応援ステーションばんびさんが、教育相談に関する学習会のイベントを行います。
昨年度にはなかった会で、教育委員会の方をお招きして教育相談についてのお話を伺ったり、相談支援事業所の職員や先輩保護者から実際の経験を基に就学前の準備や放ディ等、就学後のサポートについてのお話を聞いたりすることのできる機会となっています。
お申し込みは記載のQRコード他、来島会のホームページからできますので、今年度受ける予定の方はもちろん、興味がある方はお話だけでも聞いてみるのが良いのではいかと思います。
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高橋歩美