【コラム】Nothing about us without us(高橋歩美)
Nothing about us without us
これは国連で障がい者権利条約の採択を目指したときの世界中の障がい者の合言葉で、「自分たちのことを自分たち抜きに決めるな」という意味が込められています。
インクルーシブ社会やインクルーシブ教育について非常に分かりやすく以下のサイトに描かれていますのでこちらをご覧ください。
【図解】インクルーシブ教育とは? 重要キーワードと日本における現状をわかりやすくまとめました (catalyst-for-edu.org)
昨年、スイスで行われた国連障がい者権利委員会では、障がいのある当事者が日本の現状について訴えに行きました。
その会に参加された川端舞さんがNHKのバリバラという番組の中で自身の経験を踏まえてインクルーシブ教育について話す中で、非常に印象的だった部分を踏まえ、私の経験も合わせてご紹介します。
1. 支援員さんや加配の先生の関わり方について
地域の学校を選んだ際に必要に応じて支援員さんや介助員さんが就くことがありますが、川端さんの場合も小学校入学時に支援員さんがいたそうです。しかし、担任の先生が川端さん本人ではなく「支援員さん」を介して話しかける形になってしまい、「支援員さん」の存在によってうまく友達との関係作りができなかったそうです。
我が子も幼稚園で加配の先生がいましたが、ベタ付きするほうが集団生活がうまくいかないことに先生たちが気づいてくれて、適度な距離で見守り支えてくれました。また、担任の先生はお遊戯会のプリントも他の子と同じように当たり前にまず息子へ手渡してくれたとき、非常に嬉しかったのを覚えています。
私の場合は先生がその「気づき」を持ってくれていたので、こちらから敢えて伝える必要性がありませんでしたが、大人の介入や支援が必ずしも100%正しい支援になるわけではないことを頭に入れておく必要があるように思います。
2. 同じ教室で過ごす時間を持つことの大切さ
番組の中で川端さんは、支援級で過ごしていた友達のことを以下のように話しています。
「(自分ではなく)知的障害の子はほとんどの時間をその教室で過ごして、(普通教室で過ごした自分は)自分とは違うと思ってしまっていた
同じ教室で学んでいないと 同じ学校にいても仲間だとは思えない同じ教室にいるのが大事」
支援級で学ぶことが悪いということではありません。人目が気になる、静かな環境が過ごしやすい子など特性によって違うからです。
本人が希望している場合は構わないと思いますが、先の日本型特別支援教育のように、時間数がどうだから支援級で何時間は過ごす、とか人手が足りないから支援級とかそんな環境設定の理由で支援級で過ごす時間が長くなることには私は反対です。川端さんの体験はその最たるものではないかと私は思います。(図1、2)
3.求められる合理的配慮
川端さんは合理的配慮についてこのように話していました。
「私はこうゆうことが苦手だという自己開示のチャンスがあったら良かった。」と。
2の話の続きになりますが、高校では普通高校に進学。先生が川端さんの話を直接聞いてくれて、それを見ていた友達も話しかけてくれるようになったそうです。高校時代の友達とは今でも付き合えている。とありました。
みなさんは友達をどのようにして作りましたか?本を読んで作りましたか?勉強をして作り方を学んだのでしょうか?
違いますよね。仲が良いか悪いかはおいといて、動物でも人間でも一緒に過ごす時間の積み重ねによって関係性を学ぶのです。
最近はコロナ禍になり「普通の人間関係」がわからない子どもたちが増えてきています。それは親も一緒です。
ウイルスを恐れ疎遠になり、気づけば人付き合いそのものを恐れるようになった。そして億劫になった。スマホ一つで欲しいものは手軽に手に入れられるようになりました。
しかし、大切なことを忘れてはいけない。人と触れ合うことや温かさは直接関わることでしか得られないとても大切なものであり、幼少期のそれは人格形成の土台を築く非常に大切な経験となるのです。
インクルーシブ教育の話をするとき、発達障害のことばかりが取り上げられることが多いですがそうではありません。
性的マイノリティ、外国にルーツを持つ、ヤングケアラーなど今は多岐に渡る困りごとがたくさんあるのです。それらの「困りごと」を「障がい」と呼ぶのであれば、インクルーシブ教育とは、「障がいのある子とない子がどうやって一緒に過ごせるかを考えること」だと思うのです。
【図解】インクルーシブ教育とは? 重要キーワードと日本における現状をわかりやすくまとめました (catalyst-for-edu.org)
これからの小学校生活で息子に何を一番身に付けてほしいかというと、人間関係の築き方です。
私の理想は、新居浜市出身の自閉症の画家石村嘉成さんです。
画家になってほしいとかではありません。現在、2月11日までの期間限定でTVerで彼を育てたトモニ療育センターの河島淳子さんのドキュメンタリー「RSK 地域スペシャル メッセージー画家・石村嘉成を生んだ療育―」が配信されています。療育も千差万別であることを是非知ってください。
最後に「今、私が息子へ思うこと」です。
「これからも先生や友達の言うことやわからないことがきっとあります。言葉も話せないから言いたいことも十分伝えられないことがきっとたくさんあります。なら、カードでも文字でも何でもいいから代わりに伝えられる手段を見つけなさい。それは私も一緒に考えて行くことができます。だけど人間関係作りは、特に家族以外の人との関係作りは家では教えてあげられない。母さんはこれまでのあなたを見てきて思います。あなたは人と接する中で自分の力で十分適応してきました。私たち家族が思っていた以上に成長しました。それは支えてくれた周りのみんなのおかげです。感謝を忘れないでください。
これから今まで以上にしんどい生活が待っています。それでも諦めることなく食らいついてください。あなたができないことは母としてフォローをしていきます。母も学びの姿勢を忘れず負けないように頑張ります。どっちかが根負けするまで頑張りましょう。」
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高橋歩美