【コラム】「選ぶ権利」(高橋歩美)

長らく記事を更新しておらず、すみませんでした!この間色々なことがありました。

 

まず、息子の就学先が決定しました。地域の小学校の支援級に進学します。

今年から知的学級でも支援学校相当の判定が出た子には支援員を配置することができるようになったため、我が子は知的学級を希望させてもらいました。(ただ、この「支援学校相当」の子に限定されるところはやはり改善が必要だと個人的には思います。判定が出なければ支援員が就かないという制度自体がやっぱりおかしいのではないかと。もっと実態に応じた対応があればいいのにと思いました。)

教育相談の判定結果が出たのが9月頭。

判定結果しか保護者には通知がないので、さてこれからどうしたら良いのか、教育委員会と進学先の学校に電話をして相談をしました。

 

すると教育委員会からは進学先の学校に相談するよう言われ、10月初旬に進学先と1回目の相談をさせてもらいました。

この時に家族の意向としては教育相談のときと変わらず地域の小学校の支援級に進みたいけれど、正直迷っている旨を伝えました。

また息子に支援員が就くことが大前提であって、就かないとなると(現段階では未確定だから)地域への進学は難しいと考えていることも伝えました。

 

それと並行して入学通知書が自宅に届きました。息子は学校が決まっていなかったため提出しなくていいものと思っていたら、進学先が未定であっても本来の進学先の学校へ提出するものであることをその時に初めて知りました。

そういった教育相談後の流れや判定結果と違う進路を取る場合についてもそうですが、詳しい判定理由なども一緒に同封して保護者に案内をしてほしいと思いました。

そうでなければ私のように大半の方が結果教育委員会に電話をし確認をして、逆に非効率で大変だと感じました。

 

また10月中旬には特別支援学校の幼児体験にも参加しました。

同時期に地域の進学先の校長先生ともお話させていただきました。この話し合いまでに、自分の中で何が決定打になるのかを自問自答し続けました。

最終的な決定打になったのは大きく二つ。

一つは支援員が就くかどうか、もう一つは10月上旬に行われた幼稚園での最後の運動会でした。

 

年少の運動会ではかけっこを走ることすらできず年中でも途中で歩き、逆走しました。

それが今年は最初から最後まで走り抜いたのです。

絶対に無理だと思っていたリレーは友達と手を繋ぎ走り、鼓笛は重たい太鼓を持って10分近く整列して演奏を続けました。

進学先の学校の先生と相談したときにこう質問をされました。

「息子さんは何があったら落ち着いて行動できますか?」

この答え。

私は「周りの人、集団、友達」だと思いました。

本来自閉症児は人との関係を持たないかのような素振りを見せると言われます。「人に興味がないかのように」とか「周りの人が見えていないかのように」とか。

それは間違っていないと思います。

類似した様子を見せる子は確かに多いですし、実際にそうなのでしょう。

我が子も長らくその期間はありました。耳が聞こえていないと思い、聴力も脳波も調べました。正しい用途を理解しておもちゃを使用することもできない、呼びかけにも応じない、指差しもない、喃語も発話もない、目も合わない、排泄も自立しない、集団生活なんか無理だと思っていました。

それは私だけでなく、昔の息子を知る人はほぼみんな思っていたと思います。

医師にも「この子には周りの人が必要ないんです」と言われたこともありました。この子には毎日通園ができる環境に行かせ、療育を受け、コミュニケーションの代替手段を学ぶことこそが望ましいと、きっと私含め誰もがそう思っていたと思います。

でも、その選択になんとなく違和感を感じていて。私は療育一本にする選択はしませんでした。

あれから4年。

彼は集団生活を通して格段に成長をしました。

それでも「普通か?」と聞かれたらはっきりと「普通ではない」と胸を張って答えられるほど、同世代の子とは違います。

療育ももちろん受けています。

代替コミュニケーションとしてカードも有効です。排泄の失敗だってあります。言葉もありません。

 

それでもこの子は人と目を合わすようになりました。

何かをする際必ず周りの人の顔を伺い、許可を得るようになりました。大人の服の裾を引っ張って、したいことを伝えようともします。

怒られたら泣いて、お辞儀をして謝る素振りも見せます。

友達とおもちゃの取り合いで泣くことだってあります。兄弟げんかもするようになりました。

 

どれ一つを取っても、この子と私たち家族だけではなし得なかったことだと思います。

この子には「人」が必要だったのです。関わってくれる人と、支えてくれる人、そして同い年の子どもたち。一時はすべて失くしたかのようだった息子は色んなものを見て、感じて、経験して、もう一度自分で身に付けていったのではないかと思います。

忘れ物探しのような4年間だったと思います。

 

その4年間の彼の姿を見てきて、私は進学先を決めました。

 

小学校へ進んだ時、幼稚園と同じようにはいかないと思います。

3年間で積み重ねてきたものはゼロに、また振り出しに戻ると思います。

それでもこの子の可能性を信じたい。この子が生きやすくなるためだけに個別の支援をするのではない。

「人」の中で生きるために必要な支援があれば、それをしていく。

 

就学前健診では、10名程度のグループになって検診や検査をして回りました。

私も付き添いましたが、一番心強かったのは同じ班になった同じ幼稚園の友達でした。息子の名前を何度も呼んでくれ、大きな声がでたら「しーっ」と。何かにつけて気を配ってくれていました。

息子はそれに自然と応える形で整列をし、座って順番を待ちました。それは母である私にはできない支援でした。

私も付き添いはしましたが、あの日私はほぼ何もしませんでした。

自分も日々働く中で感じるのですが、学校という現場は独特であり、他の生徒や先生の数、教室の数、やらなければならないこと、教育課程、校則etc. 本当に様々な制約があって、特性がある子にとって、うまくやり過ごせないことがたくさん出てくるのです。

それでも、この子一人のために学校があるわけではないのです。

この子一人のために世の中があるわけでもないように。でも、世界は平等に一人一人のためにある。

だから私は「人」の中で過ごせるようになることを目標に親子で頑張っていこうと決めました。

その覚悟を決めることができたのは、これまで関わってもらった方々の支援、配慮、協力、そして息子の努力する姿、姉妹の姿、家族のおかげでした。私自身も「人」の力に勇気づけられてきたことにこの就学の問題に直面して改めて気付くことができました。

それは「特別支援学校だからできる、できない」とか「地域の学校だからできる、できない」ということではありません。

「どんな子になってほしいのか」

それが大前提として保護者の中にあって、そのためには今どんな力を身に付けさせたいか。

もっと具体的に言えば、誰と、どこで、どんな風に、どの程度を、いつまでに、を考えていくことが大切なのではないかと思います。

そうやって私たち保護者が目標を見据えたときに、伴走者や仲間が見つかっていくのだと思うのです。教育の現場では、学校があり、今はフリースクールもある。学校に行かない選択肢だってある。

療育施設があり、医療現場があり、相談支援事業所があり。保護者同士で気軽に話せる場や情報を手に入れるための機会もある。そうやって自分たち家族に何が必要かを見極めていくうちに「チーム」が出来上がっていく。

それが支援体制になるのではないかと思います。

「家族の思い」が行動の核になることを忘れずにいれば、どんな選択も正解になると私は思います。

 

息子との次の1年間の目標は、「毎日落ち着いて学校に通うこと」。

私の1年間の目標は「自分に負けないこと。」

さて、教育相談のアンケートにご協力いただきありがとうございました。時間がかかってしまいましたが、集計をしました。この結果を基に改善に向けて動いてみたいなと思います。

 

教育相談アンケート 集計結果はこちら↓

みとん今治用教育相談アンケート集計

 

アンケートの中で、回答しても意見が反映されていないというご意見もありました。純粋に申し訳ないと感じているとともに、それでも答えてくださったことがありがたいと思いました。

また「一保護者にできることはありますか?」という力強いご意見もありました。

何をすればうまくいくのか私もわからないですが、こうやって疑問に感じたことやこうすればうまくいくのではないかと思うことを、なし崩しにするのではなく、形にして表出していくことが非常に大切であると思います。

挑戦しなければ失敗もしませんが、何も得られるものもありません。一番の失敗は「何もしないこと」だと私は思います。

今回自分の経験から、夏の教育相談後に進学先の先生と直接話してからの方が実質的に動きがあり、重要であったと感じたことから、多数の同じご意見があったように、夏の教育相談自体の意義に疑問と、教育相談の在り方も含めかなり改善点があると個人的には感じました。今日より明日。今年より来年。少しでもみんなが幸せになりますように。

急に寒くなりました。みなさん息抜きしながら楽しく過ごしましょう。

 

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高橋歩美

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