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ばりじんNo.35。渡辺パイル・渡邊文雄さん。

さらに次世代へ今治タオルを。

ばりじん35人目の紹介は、渡辺パイル織物株式会社の渡邊文雄さんのご紹介です。

タオル会社の長男に生まれ、小さい頃から漠然と将来の自分の仕事をイメージし、若くして継ぐことを決めて地元に戻ってきたその経緯やこれからのことを伺いました。

ぜひ最後までお付き合いください。

常に頭の片隅にタオルを感じた学生時代

ーー出身は今治だと思うんですが、どんな学生生活でしたか。

小中高と今治で過ごして、大学から東京の大学に行きました。

その時ちょうど佐藤可士和さんがプロデュースした学校で、授業もあるということで行ったんですけど、結局授業はタイミングも悪かったり、人気もすごかったりで受けれずじまいでしたね。

(事務所の2階部分はミーティングルーム兼ショールーム)

ーーやっぱり小さな頃から父の跡を継ぐイメージだったんですか。

そうですね。幼稚園くらいから「お前が次や。」というのは言われ続けてたと思います。

ーーそんな小さな頃から。いやにはならないですか。

やっぱりそれと同時に、父からは「好きなこともやれ」とも言われてたので、自ら継ぐことを選んだって感じですね。

ーーいつごろその決意は固まりましたか。

大学に行く時ですね。その時に継ぐことを決めて将来を見据えた上で学部を選んだりしようということで、逆算していました。

ーーなるほど。どんな理由で大学を選んだんですか。

その時感じた、今の会社に足りないものなんだろうって考えた時に、海外戦略はまだ全然だったので、その中で国際的な視野を持とうと学部を選びました
当時はブランディング初期で海外には進出してなかったので、その部分を自分が担おうという感じでした。

(表面に見えるループのことを”パイル”と呼ぶ)

海外への第一歩

ーー大学時代は留学とかしていたんですか。

そうですね。やっぱりアメリカに行きたい願望があったので、まずは3週間くらい一人旅でアメリカに行きました。

ーーその旅行で満足しましたか。

全然ですね。もっと深く知りたいなと思ったので、大学4年の秋に、全部単位を取りきって今度は留学しました。

ーーアメリカの大学に入ったんですか。

そうですね。初めは語学学校に行って、そのあとは普通の大学に編入しました。全部で10ヶ月くらいですね。

ーーそれで日本へ。

いや、それから今も取引している綿花の畑に一ヶ月お手伝いに行きました。手伝えてたかどうかはわかんないですけどね。

(会社に飾られている綿花。工場の入り口には米国の綿畑のポスターも)

ーーなるほど。現場を見たんですね。

やっぱり紡績会社から綿を買ったら生産者さんって見えないんですけど、直接現場を見せてもらったことはすごくいい経験ですね。

ーー全ての行動が渡辺パイルへ向いていた。

結果的にそうなりましたね。

ーー途中で心変わりみたいなのはなかったんですか。

本当に自分のやりたいことってなんだろうって思うことはありましたね。あまりにもタオルに進むことが当たり前すぎて、タオルなかったら何になるんだろうって。

ーー結論は出たんですか。

ビールですね。ビール好きなので、ビールを生産する方に行きたいのかなってのは少しありましたね。

(実際にビール染めのタオルなども展開する予定とのこと)

ーーそれでもタオルを。

祖父の時代から続いてきたものなんでね。継がないという選択肢がなかったですよね。それを振り払ってまでやりたいことがなかったですね。

就職活動もすべてタオルへ。

ーー大学を卒業してからはどんな就職活動でしたか。

留学から帰ってきて、そのまま今治に戻るのか、就職するのか考えたんですけど、結局インターンとかもさせてもらってたんですけど、いろんな縁もあってニューヨークの洋服の生地の商社みたいなところに入りました。

ーーニューヨークに勤めていたんですか。

そうです。10ヶ月くらいいました。インターンだったんですけど、ビザの関係もあってニューヨークから東京に戻るか、今治に戻るかという選択肢で、今治に戻ることを決めました。

(事務所の階段に無数にはめ込まれた糸を巻く、おそらくボビン)

ーーどこかに正社員で働いた経験はなかった。

ないですね。ただ、今の取引先で3年くらいバイトしたりしてましたね。

ーーもう全てが会社を継ぐことに紐付いてる。

そうなっちゃってましたね。笑

タオル会社に入って。

ーー佐藤可士和さんという方のブランディングで再興したと言われる今治タオルの、その以前の右肩下がり状態だったらどうでしたか。

その影響ももちろんあったんですけど、社長(父)がなんか変なのいっぱい作ってたんですよ。人と違うような製品作ってたり、OEMが多い中でも自社から提案したりというのもやってたので、社長(父)の背中を見て、面白そうだなというのもありました。

(工場にあるトヨダ紡績の機械)

ーー社長(父)のようになりたいという感じですか。

もちろん尊敬してますけど、それと同時にこの人みたいにはなれないなというのも感じました。

ーーそれはどういったところで。

なんか芸術家みたいな人なんですよね。感性でやるみたいな。音楽を聴いてるとタオルを作るアイデアが浮かぶみたいな。そんなのぼくはできないですから。

ーー追いつこうというのではなく、自分のできるところを探した。

そうですね。

ーー今はどんな仕事内容ですか。

今は生産管理したり、企画とか営業とか、何かと全部絡んでる感じですね。

(素敵な事務所の前にタオルを並べて説明を受ける)

ーーイメージした自分との3年目の今とではギャップはありますか。

1年半くらいはずっと社長(父)の出張とかにもついていかせてもらってましたけど、ほとんど発言することもなかったです。まずは一言一句コピーだなという感じでした。
お客さんも僕の方は見ないですからね。

ーーそれが少しずつ変わってきてる。

そうですね。少しずつですけど自分のお客さんと呼べるような人も出てきましたね。

ーー社長との違いはどこだと分析してますか。

良くも悪くも社長ですからね。決定権を持つ強い人と、その横にいる何でも話せる人みたいな位置づけですかね。それと、生地とかトレンドの話はぼくの方が得意かなという感じはします。

ただ、社長は本当にものづくりの人間で、18歳から社長業をしてるので、何でも自分でやってきたので、そこに追いつくのはなかなか簡単じゃないですよね。

ーー背中はまだまだ遠いですか。

そうですね。まだ遠いです。

喜びの声が原動力。

ーータオル会社に入って楽しい部分ってどこですか。

やっぱり直接喜んでくれる声が届くのが嬉しいですね。百貨店とかで店頭販売をしたりするんですけど、その時に「この前買ったらすごく良かったから友達にも勧めたい」とかの声をもらえると嬉しいですよね。引き出物とかでも使っていただく方もいらっしゃるので、使ってみてお声をいただくのもすごく嬉しいですね。

(事務所に飾られたバスタオル)

ーーエンドユーザーの声が届いている。

そうですね。あんまり生産だけをしているとそういうところにはいかないんですけど、その声を直接聞きたいから店頭に立っているみたいなところもありますね。

ーー生産管理でうまくいくのも喜びになりますか。

それもありますね。管理できていないと機械が止まっちゃうので、それがうまく回ると嬉しいですよね。

(工場には無数のタオルと機械が所狭しと並んでいる)

ーー海外も行ったりしてますか。

パリとミラノの展示会も去年は行ってました。ただ、これは生地だったので、自分たちの出したいタオルを今年から出していこうということで、パートナーと組んで海外へも届けていきます。

ーーやはり海外へ目を向けたい。

もちろんそうですけど、日本でもしっかりタオルを売って基盤を固めつつ、やっぱり海外へも挑戦したいですね。

ーーどこに売りたいとかありますか。

やっぱりアメリカです。アメリカで売って仕事作ってアメリカに帰りたいですね。

100年は通過点。

ーー明確な将来像はありますか。

とりあえず100年ですね。あと46年。これは続けることが最低条件ですね。

(創業期から使い続けて今も現役の機械)

ーー46年って結構長いですね。

そうです、ぼくの代だけでは無理ですね。

ーーということは次世代につなげる。

そうです。まだ子供はいないですけど、喜んで会社を継いでくれるような魅力のある会社にしていきたいですね。

それと、日本ではもちろんですけど、世界的にも「渡辺パイル」を知っている人を増やすことが目標です。

ーー自分が見た偉大な父の背中を自分も見せる。

そうですね。そうなりたいですね。

 

事務所でのお話と工場の中でのお話。

やはり工場で話す姿、タオルのことを話す時が生き生きと話してくれました。

18歳から社長業を務める偉大な父の背中を見ながら、自身も20代の前半で地元に戻り家業を継ぐことを決意。

その強い意志が今治の伝統産業であるタオルを支え、さらには100年企業でさえも通過点だと語る。

その背中はまだ小さいながらもこれからの今治を背負う決意を確認することができました。

これから今治タオルを世界へ届ける壮大な野望。

“WATANABE PILE”の文字が記されたタオルが世界を駆け回るのはそう遠くないかもしません。

渡辺パイル織物株式会社
渡邊文雄

渡辺パイル織物株式会社HP

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