【コラム】行事の参加~「正解」って何でしょう~(高橋歩美)
2.5回・行事の参加~「正解」って何でしょう~
前回のコラムはこちら。
「【コラム】発達障がいの息子の園選びと入園準備(高橋歩美)」
息子は4月から年中。
年少の1年間の様子を書きます。まず、息子は毎朝、幼稚園に行きますが、週4日は日中療育施設で過ごし、夕方園に帰ってきます。
そして1日は保育所等訪問事業を使い、療育施設の先生がついてくださって園で1日過ごしました。園では年少のうちは各クラスにフリーの先生がついて主に息子にはその先生がついていてくれました。
色々な行事をどのようにしてきたか。今年3回遠足がありましたが、息子は遠足には参加しませんでした。
最初の遠足は、年少で初めての遠足ということで息子以外にも手が必要となることが予想されたので参加しませんでした。次の遠足も行った先が初めてで、どうなるか予想がつかないので参加せず。そして最後の遠足も、年長さんの方に多くの先生が参加されたのもあって人手が足りず、参加はしませんでした。
これ、全て理由として人手不足になりますが、その度担任の先生と話をして決めたので私としては何の問題もありませんでした。
そして夏祭りの盆踊り。
まずみんなと同じ円状に立つことが無理だと思っていました。
1年前の保育園の運動会では走り回って何もできなかったからです。でも練習はさせてみようと思い、先生に踊りを録画していただき自宅で見せて練習をしました。そして週1の登園の日に先生に付いてもらい練習して当日を迎えました。
なんと2曲の間ずっと円状の線の上に立っていられたのです。足形も必要なく立っていました。私が隣にいたにも関わらず抱き着いてきたり泣いたりもせず立って団扇を叩く仕草も少し見られました。この時に、「息子は、集団行動ができるかも」と思いました。
そして参観日の合唱、合奏。
何にもしませんでしたが、2曲の間同じ場所に立っていられました。
そして運動会。
ダンスとかけっこ。ダンスは夏祭りと同じように録画したものを自宅で練習して臨みました。初めの1フレーズ程反応を示し、動いたのです。移動はさすがに一人ではできませんでしたが、広いグラウンドの上に立っていることができました。
そしてかけっこ。なかなかスタートせず、したと思ったら逆走。でも最後まで一人で走り(歩き抜き)ゴールしました。練習では、最初から最後まで走り切ったんだと、先生が動画で見せてくれて私はすごくうれしかったです。
そしてお遊戯会。練習から一人衣装を着させてもらいダンスに挑戦しました。あまり練習する時間がなく、本番では手袋に意識が集中してしまい踊ることはなかったですが、衣装を嫌がることなく着てずっと立っていられました。
立つことがそんなにすごいか?そう思う方もいるでしょう。踊りもしない、歌いもしない。ただ立っているだけ。それをすごい、と思うのか。できないと捉えて恥じるのか。どう捉えるかは自分次第ですが、考え方は自分で選択しています。だから私は考え方が一番大事だと思っています。
病院の待合や出先では同じところでじっとすることができない多動気味の息子。そんな息子が同じ場所に立っていることは私からしたらあり得ないことでした。私と一緒ではできないことが幼稚園ではできた。これが集団の力かな、と思うと同時に1年前ではできなかったことができるようになっている姿を見て、毎日の姿からはわからなかったけれど、時間と共に確実に成長をしていることを知りました。
やってみないとわからない。やらせてみないとわからない。私が毎日見る世界だけで息子をこういう子だと決めつけ、可能性を狭めかけたと感じた瞬間でした。
行事だけでなく、最近では立位でトイレをしたり、朝の仕度をできるように練習もしたりもしています。その一つ一つをこなせるようにするために、先生たちと話をし、療育施設・園の先生と話をしながら進んできました。
たくさんの人たちに支えられて息子は今を生きています。
息子は医師の見立てでは幼稚園で社会性を学ぶよりも、療育でしっかりスキルを上げるほうがいいと言われていました。(病院での姿を見たら誰でもそう思うと思いますし、そうかもしれません。)どちらが正しいかは別にして、私はこれでよかったんじゃないかと思っています。
何よりうれしかったのは、息子の「できた」が増えたことよりも、一緒に悩んでくれる「人」が増えたことです。
自閉症児さんを初めて受け持つ担任の先生でしたが、経験なんかなくてもどうしたらいいのかを療育施設の先生たちと協力しながら考えてくれていました。フリーの先生も息子を良く見てくれていて、いつも手に握るおもちゃが変化していることや、そのおもちゃが一時期行方不明になった際には、私よりもどうしたらいいのかと悩んでくれていました。
理解のない方だったら、そんなおもちゃくらいなくたっていいだろうとか、運動会だってそんなもの持たせて演技をすることを許してくれなかったかもしれません。当たり前のように息子に必要なものとしてみてくださっていたし、息子を理解しようとしてくれていました。
たくさんの子どもたちがいて大変だったろうに、よく面倒をみてくれたと私は思います。その他の先生たちもみなさん息子に声掛けをしてくれたり、関わってくれたり、その全てがありがたかったなぁと振り返り思います。
先生たちと話す中で、「もし息子が療育施設に通っていなくて、療育施設の先生から保育所等訪問などで助言がもらえなかったとしたら、先生はこの1年息子の支援できましたか?」と尋ねると「できなかったと思う。どうしていいかわからなかった。」と。
そんな方が多いのではないかと思うのです。
誰しもどの分野でも「初めて」からの出発です。1から勉強するのもいいですが、先行く人がわかることを教えていく。その連携が必要とされているであろうし、その連携を必要とする誰もが自由に選択できるシステム作りが早急に必要だと考えています。
私も英語の教員でしたが、現場に入ってわからないことだらけ。
その頃は特別支援・療育のことはよく知らず、親になり、我が身に降りかかり、はじめて学び始めました。同じ教員でもところ変われば全く事情が違う。同じ保護者でも全然違うように。だから色んな分野に関して、そこに通う保護者の方が詳しいと思うことは多々あります。
私自身息子の通っている施設以外の情報も誰かに教えてもらうまでわかりませんでした。確かに、ネット上には自分で調べれば出てくる情報はたくさんある。でも全てを知り尽くすことはできない。子育てに「正解」がないのと同じで、この分野にだって「正解」なんてないのだと思うのです。
ただ、自分から積極的に動いた人にしか手に入らない情報が多い。でも日々の生活に忙殺され、ゆとりをもって調べる時間がない人がたくさんです。私だってそうです。毎日生きるので精いっぱいなところがあります。(笑)
もっとわかりやすく情報共有ができる仕組みがあればいいのにと感じています。
例えば、ここに登録しておけば、ここを見れば…
〇色んな施設や団体の保護者会や勉強会の案内がもれなく入ってくる
〇教育相談に先立って学校に見学に行くタイミングのお知らせ
〇ディの見学の時期や、受給者証の申請はいつから可能になるのか
〇ディや自発、相談支援事業所の数や空き状況などの確認ができる
〇ここを見れば、家庭療育に使える資料がDLできる
〇参加できなかった勉強会・保護者会などの情報が得られる
LITALICO発達ナビ というのをご存知ですか?私も最近教えてもらったのですが、コラムからディまで様々な情報が閲覧できるサイトです。こういった情報共有が簡単にできるものの今治版があればいいなと思います。良ければ是非検索してみてください。
さて、次回からはまたタイプの違う発達凸凹さんを抱えるお母さんたちの投稿が続きます。お楽しみに。
<お知らせ>
アンケートの締め切りを4月末まで延長しました。ご協力よろしくお願いいたします。
①発達障がい児(発達に不安)を抱える保護者向け
https://forms.gle/eoL1KU4c1PRvj7U57
②障がい児に関わる(関わっていた)教育関係者・支援者向け
https://forms.gle/yAwjW8ds2nguqsTt8
③①、②以外の子育て中(子育てをしてきた・するかもしれない)方向け
高橋歩美