【コラム】仕事と子育て(高橋歩美)
仕事と子育て
息子は8月に3歳になり、今月の健診で「自閉症」と診断されました。
そんなグレーから脱した息子は、なんとこの記事を書いている当日、家からも脱走しました(笑)
本当は笑えないんですが。大人しく一人遊びを始めたので、ちょっと私も休憩。
本でも読もうかな、と2ページ目読み出した頃です。急に外から“ピッピッピッピッ”と車のスライドドアが開く音が。両隣の家の車は外出中のはず。
嫌な予感がし、いるはずの部屋を覗くと息子がいない。どこにもいない。これは時間との勝負だと思い玄関を飛び出し車を見ると、後部座席のドア(スライド式)が開いている。そこにはチャイルドシートにちょこんと座る息子がいました。
本当にほっとしました。そしてぞっとする思いがこみ上げてきました。本を読んでいる中であの音に気付けて良かった。もしうとうとしていたら、気が付かなかったかもしれない。スライドドアが開けっぱなしでよかった。どこにいるのかすぐ予測がついたし、後部座席は基本的にチャイルドロックにしているので中からは開かず、この暑さで閉め切っていたら死んでしまうかもしれない。
そういったことを考えると奇跡が重なったなと思って、「神様~ありがとー!」って思いました。
そんなこんな、緊張の続く毎日を送る保護者の皆様、季節の変わり目、体調など崩していませんか?
我が家は4歳の次女が多型滲出性紅斑という原因ははっきりしないけれど、風邪やアレルギーなどの体調不良からくる発疹と闘い、早2週間目に突入です(汗)長い。
子どもが体調を崩すと本当に骨が折れます。それでもここ数日、仕事を休むことはないものの、早退させてもらい通院しながらなんとかやっています。さて今回が最後のみとんの記事も、当初の予定を変更し(変更ばっかでごめんなさい)、「仕事と子育て」について書きます。
皆さんの職場は育休・産休制を初めとする育児のための勤務制度は整っていますか?
最近は男性の制度利用も聞くようになり、実際私の知人男性も育休を取得しており、少しづつ制度の利用が男女ともに普及してきているのかなと思っていました。しかし、教職員としての立場だけで見ると、H29年度の愛媛県の男性教職員の育休取得率は全国ワースト2位だそう。
「えー!」愛媛県、遅れてるんですね。「井の中の蛙、大海を知らず。」なもので、全く知りませんでした。ただ遅れているだろうなとは感じていましたが(男性の取得者を聞いたことなかったので)。
最近はどの企業でも働き方改革と称して、業務改善を行っているところだと思います。残業をなくそう、ブラック脱出など様々ですが、中身の伴っていない、制度だけ独り歩きの場合もよく聞きます。ノー残業dayを設けてみたり、就業時間以外にパソコンにログインできないようにし残業できないようにする、持ち帰りの禁止など、あれこれ制度としての枠だけ決め、実質業務は減っていない。
まず、業務内容という「中身」を整えてからそういう残業できないようにする「器」の部分を整えることが大事ではないかと思います。その業務内容を整える際に勤務形態について考えることは切っても切れない関係であるにも関わらず、ないがしろにされがちだとも感じます。そもそも、個人が抱える問題も生活環境も違う者同士が集まって働く会社という集団において、みんなが同じ時間に勤務する必要があるのでしょうか。ましてや能力にも仕事内容にも差があり、業務にかかる時間は人それぞれです。
その上に個人が抱える事情もある中で、全員が同じ時間帯に仕事を終わらせることを前提とした制度改善は意味がない上に、自分たちの首を絞めるだけの無意味な行動のように思うのです。特に今の時代の子育てや介護の現状から考えると、時間と場所の制限を支障のない限りでなくすよう努力することが大切だと思うのですが、今の流れは逆を行っているような気がしています。
さて、そんな中、今回は子育てに関する制度について私が感じたことを書きたいと思います。今治市の企業の中で、育児に関する時間短縮勤務を採用している企業は多いと思いますが(育休がない企業もありますよね)、ではその年齢はいくつまででしょうか?おそらく3歳までのところが多いのではないかと思います。小学校就学までは会社の努力義務ということにしていたり、小学校卒業まで、あるいは10歳までなど、それぞれが規定を設けているところもあると思います。
実際、みなさん働いてみてどうでしょうか?私はまだ子どもが小学校に上がっていない立場ですが、今の時点で3人をフルタイムで見るのは正直しんどいことが多いです。朝7時半~6時まで子どもたちを預け、そこから家のことをします。それが働くということだといわれるとそうなんですが、昔と違い、祖父母もまだ就労していたり、格家族も多く、協力が得られなかったり、旦那さんの育児への協力も会社の制度だけでなく、雰囲気として整っておらず得られなかったり。未だに女性が家事も育児もしながら、「女性も社会進出を」みたいな風潮があるような気がしています。
それって、可能でしょうか?私は、女性も仕事をというのであれば、男性も育児や家事をする余裕を与えられなければいけないと思います。それこそ制度だけできて中身が整っていないのと同じで、無理がいっていると思うのです。実際、私の家庭もそうです。私の職場は子育て中のワーママに対する理解もあるほうですが、旦那側はまだまだ十分ではありません。子どもの病気などの際、ちょっと数時間病院に連れて行きたくても時間休の制度もないし、まず育児、そんなことで休めない雰囲気を醸し出しています。
育児って何でしょう。よく育児にかかる時間は?とか聞かれたものを目にしますが、それこそ無限大じゃないでしょうか?食事を食べさせて、排泄をさせ、お風呂に入れて、出かける準備をさせる。
これだけできたら育児ですか?違います。抱っこしたり、散歩したり、抱きしめたり。今日あったことを話したり、一緒にお手伝いをしたり、公園で遊んだり、小学生になれば宿題もしたり。そうやって心と身体を育てていくことが育児です。なのに、今は共働きでないとやっていけないご時世になり、幼稚園や認定こども園でも預かり保育を利用し、就学すると放課後は児童クラブや塾などに通ったり、鍵っ子になり、家で動画やゲームをする子どもたちが増えているような気がします。
単純に親と過ごす時間が減っているような気がするのです。仕事をしているから、宿題はせめて児童クラブで済ませてほしい。そんな気持ちもわかります。でも児童クラブも生徒が多様化し、また土曜の利用も増え負担が大きくなっているような気がします。よく家庭の教育力が低下している。子どもたちの能力が低下しているなどとと耳にしますが、家庭で関わる時間が少なくなりすぎていたり、何より仕事や時間に追われ余裕のない人が多い気がするのです。
家事もする気力がない、なんとなくだるい。疲れがとれない。余裕がなくて子どもにゆったり関われない、思ったように子どもに接してやれない。そんな負の連鎖から抜けられず、苦しい思いをしている保護者の人が多いのではないかと思うのです。
長々と書きましたが、子育てをする上で時間とゆとりは必要だと思います。のんびりゆったりしながら関わる時間が必要だと私は思うのです。
日本人は勤勉です。のんびりしていると怠けなどど思ってしまう人がいるかもしれませんが、心の「ゆとり」をもっと持ってほしいです。空を見上げて星を眺め、ぼーっとする時間くらい持っていいと思いませんか?そのためにもぜひ育児をする世代の人にはせめて子どもが小学校卒業くらいまでは時短勤務を選択できる制度を設けてもらいたいのです。
例えば2時間短縮できたら、それだけで心の余裕は全然違うし、それを毎日ではなく、仕事を遅くまでできる日は仕事をしたり。もっと勤務の時間に対するしばりの意識を変えていく必要があると思うのです。フレックス制は会社の仕事内容的に導入が難しいところも多いと思います。でもそれぞれができる範囲で今の制度を見直す。
「今までこうだったから」「誰もやったことないから」そんな言い訳はやめてほしいです。一番最悪なのは「みんな苦しい中頑張っているから」などという考えは捨てるべきです。特に上に立つ立場の人には今の時代の現状を踏まえた明るい選択をしてもらいたいです。これから親や家族の介護の問題も必ず増えます。そして我が家のような障がい児を育てる家庭も間違いなく増えます。そういった介護・障がい児を育てるための制度も見直されるべきです。
児童クラブなどはだいたい小学校3年生くらいまでで、一人で留守番ができるようになり利用する必要性も権利もなくなります。でも障がいのある子や困りごとのある子は同じでは困ります。そのために放課後デイサービスがあるだろうと思われるかもしれませんが、以前にも書いたように、受け皿に対して利用希望をする子どもたちは増加しており、実際希望日数が取れないのが実情です。そういったことはあまり知られておらず、勤務先にはフルタイムしかない。そうなると今の仕事を辞めざるを得ず、パートなど時間の都合の合うものを選んでいくしかない状態になります。
経験のある有能な人が辞めていくしかない。その現状を改善してほしいのです。子育てをしながら働くって大変ですが、ものすごく生きがいを感じるし、素敵なことだと思うのです。その機会をたった数時間の短縮制度を設けることで実現できるならいいと思いませんか?でもこれは障がいの有無に関わらず、子育て世代の人みんなに導入してもらいたいのです。どんな子を育てるにももっと時間をかけてほしいし、かける必要があると私は思うのです。
子育てって毎日の積み重ねです。親御さんも、祖父母も、デイの人など関わる人全てみんながもっとゆとりをもって関われるようにしていけたらいいのになと思います。かくゆう私の職場も、時短勤務など育児に関する制度は、子どもが小学校入学までです。このままいけば3年後、この問題に直面します。制度を変えることは難しいかもしれません。でも誰も声を上げなければ何も始まらないのです。
やってだめならまたやってみる。同じことで苦しむ人がいるなら減らせるように社会が動いていけばいいと思うのです。子育て世代の人たちの抱える問題もいまだにたくさんありますが、障がいを抱える子を持つ家族の問題はそれ以上に大きいです。家族内での関わりも、周囲との関係も、きれいごとでは済まされない問題が山積みです。
私は今回6回に渡り自分の思いや経験を綴らせてもらいました。初めは同じように障がいを持つ子を育てる保護者の方に、特にお母さんたちの役に少しでも立てれば、と思い書いてきましたが、回を追うごとに社会の問題点、課題に関して私自身が考えるいい機会になりました。
また、保護者会などで「みとん読んでますよ。」と声をかけていただけたり、メールをくださった方と繫がれたり、その声に私自身も励まされたし、「あ、本当に読んでくれているんだ。うれしいな。」といつも思っていました。
私よりもっともっと苦しい思いをしている方、経験をしてきた方はたくさんいると思います。今度はあなたが記事を書いてみてはどうでしょうか?みとんでだけでなく、愛媛新聞やSNSなどもっとたくさんの人に知ってもらえる媒体でもいいと思います。
医学や医療の進歩の反面、アレルギーや発達障害の問題など、水、空気、環境、食事、様々な現代の問題の代償が私たち人間の体に還ってきている時代であると私は思っています。この先、障がいのある人、ない人はこのままいけば同数、もしくは障がい者が上回る時代も来るのではないかと思っています。
私たちは本気で自分たちの生活を見直さなければならない時に来ていると思います。自分の思いが伝えられない、認められないことって苦しいですよね。一番苦しいのは障がいを抱える本人です。そして家族も同じくらい苦しいです。その中でどう向き合っていくのか。その負担を少しでも軽くするために、教育、療育、医療、様々な機関を利用してほしいです。間違っても一人で何とかしようと思わないでほしい。私も、母として、そしてできる限り長く教育者として、自身の子どもも含め、たくさんの子どもたちの成長に関われるよう、今の現状に感謝を忘れず毎日を過ごしていこうと思います。
この半年間、私の拙い文章を読んで少しでも何かを感じていただけたら、また、それが次に繫がったのであれば、万々歳です。人は一人では生きていけません。元気な人も必ず年老いて、誰かのお世話になるのです。
「明日は我が身」
障がいのことだけでなく、なんでも自分事として捉えていくその意識を忘れずにいてほしいです。これは、数年前の私に送る言葉でもあります。
今、どんなに不幸だと思っているとしても、あなたの人生にはたくさんの奇跡と幸せが溢れているはずなのです。どんな時も感謝を忘れないこと。私も時々見つめ直しながら、自分ってラッキーと思うようにしています。
関わってくださった皆様、そして読んでくださった皆様に本当に感謝を申し上げます。ありがとうございました。
高橋歩美