ばりじんNo.44。ハンドメイド作家・A courant d’air 池内厚子さん。
日常にそよ風を感じる時間を。
ばりじん44人目のご紹介は、ハンドメイド作家で、絵付作家の池内厚子さんのご紹介です。
素敵な笑顔の裏には、家庭での苦悩や、葛藤、その中から見出せた今のカタチ。
その全てに出会いがあり、心が動いた瞬間を克明に語っていただきました。
ぜひ最後までご覧ください。
波の小さかった学生時代からの社会人。
結婚してからのちの波に比べれば、非常に波が小さかった結婚までの池内さん。よくある地方の一人っ子の歩む道として、大学卒業後はすぐに今治に戻って就職することになったようです。
ーー出身は今治なんですよね。
そうなんです。中学高校まで今治で生活して、大学で県外に出ました。
ーー大学では何を専攻されていたんですか。
大学は京都の女子短大だったんですけど、英語の専門でしたね。
ーーでは就職は英語関係?
いや全然そんなことなかったですね。大学も推薦でなんか楽に入れて、就職するときには私一人っ子だったので父が「帰ってこい」ということだったので、特に何も違和感なく、今治に戻ってきましたね。
今治での社会人生活から結婚。
学生時代も波が決して大きくなかった池内さん。その後社会人になっても大きな波はなく、やがて結婚をすることになるんですが、未だ今のハンドメイドにつながるものは始まっていません。あることをきっかけに大きく生活は変わっていくのです。
ーー今治ではどんな仕事を。
銀行に入って、窓口業務をずっとやっていました。
ーーその後結婚を?
そうです。26歳で結婚して、その2年後くらいに出産を機に退職しました。
ーーその頃から今につながることは何かしていたんですか。
いやいや全然そんなことないですよ。雑貨とかインテリアとかは好きだったんですけど、もうそのくらいですね。
特別になにか活動するわけでもなかったですし。
ーーいつ頃からハンドメイドを始めたんですか。
それは、話すと長くなっちゃうんですけど、2人目の子どもが生まれてからしばらくしてですね。
難病を抱えて誕生した次男との生活。
何不自由なく過ごしていた結婚生活に、突如舞い降りてきた次男の難病。その当時の葛藤と苦悩。そして今に至る活動を始めるきっかけになった話など。池内さんの生活は一変します。
ーー息子さんになにが。
次男が、サイトメガロウイルスという感染症にかかった状態で生まれてきたんです。
ーーそれはどんな感染症なんですか。
10年前にはあまり一般的ではなくて、今は少しずつ認知も広がってきたみたいですけど、ざっくり言うとずっと赤ちゃんのような状態で成長していく感じなんですよね。
耳も聞き取りづらいし、喋りづらかったり。
お年寄りの介護みたいな感じの子ども版みたいな感じですね。ご飯も介護食みたいな感じですし。
ーー聞くだけではかなり大変な印象を受けます。
普通に歩けるので、突然どっかにいなくなったりもありますよ。最近は少なくなりましたけど。
ーー周りに同じような症状の人っていたんですか。
やっぱり田舎だと絶対数が少なかったですね。他県とかだと同じ立場の人のコミュニティなんかもあるみたいんですけど、今治ではなかったですね。
ーー治る病気なんですか。
まだまだ研究が進んでないようで、まだよくわかってないようです。お医者さんに聞くと、過去の例を見てもよくもなってないし、悪くもなっていないう状態らしいです。
ーーそれだと仕事は続けられない。
そうですね。もともとその時はパートなんかもしてたんですけど、ずっとそばにいなきゃいけなくなったので、そこからは息子につきっきりになったので、働きに出ることはなかったですね。入退院を繰り返しましたし。
両親にもすごく助けてもらいました。近くに両親がいなかったら本当につらかったと思います。
ーーそこから学校などにも通い始めたんですか。
一番つらかったのは3〜4際くらいでしたけど、もう10歳になるんですけど、今は普段は支援学校に通っています。そうなると少しずつ自分の時間もでき始めて、精神的にも少し余裕が出てきたんです。
ーーそこからなにかきっかけが?
そんなときに、今から約四年前ですけど、主人が声をかけてくれて、何か気分転換できることしたほうがいいってことで、スポーツクラブに通い始めたんです。
ーーご主人からのオススメだったんですね。
オススメというか、ずっと「体が固いから、将来動かなくなるよ。だからなんか動いたほうがいいよ」って言われてたんですよ。
それで重い腰を上げて動き始めました。
きっかけはスポーツクラブ。
しばらくは息子さんの世話にかかりっきりで自分の時間をなかなか作れなかった池内さんですが、少しずつ自分の時間ができ始めます。スポーツクラブをきっかけに気分はどんどん前に向き始め、新しいことに挑戦する意欲もで始めました。
ーースポーツクラブに通い始めてだいぶ変わりましたか。
最初は嫌で辞めたかったですけどね。知り合いがインストラクターをしていたこともあって、いわゆるスタジオレッスンなんかに積極的に参加しました。
ズンバとかエアロビとかですね。
ーーああいうのって入るのめちゃくちゃ勇気いりますよね。
まあ始めはちょっとありましたね。もちろん始めは後ろの方でこっそりみたいな感じでしたしね。
そこから通うようになって徐々に慣れてきて、気付いたらい一番前の列で身体動かしましたね。笑
ーーまだまだ全然ハンドメイドにいかないですね。笑
ここからですよ。笑
その中のインストラクターに、森山さんって方がいたんですよ。ばりじんでも紹介されていた森山さんです。
その森山さんがすごく前向きな方で、子育てにも悩んでいた時期でもあったので、いろんな相談に乗ってくれるようになって「自分を大事にしていいんだ」ってすごく思えるようになりました。
ーーそれでまた働くことにしたんですか。
いや、そうじゃなくて。
やっぱり子どものことを考えたら、夜寝なかったりもするので、よその会社でお勤めってのは全力を発揮できないので、時間を自由に設定できるものにしようと考えていたら、友達がハンドメイドレッスンに誘ってくれたんです。
ーーそれでハンドメイドを。
お友達が一緒にやろって誘ってくれたんですけど、お友達はあんまり絵が得意じゃなかったみたいで、辞めちゃって私だけそのまま継続しましたね。
1年目はとりあえず自分とか友達のために作り始め、2年目から少しずつ販売のことを考えるようになりました。
日常にそよ風をプラスできる時間を。
インストラクターの森山さん、ハンドメイドを紹介してくれたお友達のおかげでハンドメイド作家として自分で仕事を作ることを選んだ池内さん。一つのカテゴリーでは止まらず、4年目を迎えた今年は、さらなるチャレンジや取り組みを増加させているようです。
ーー今はどんなものを作っているんですか。
絵皿と、デコパージュというものがメインです。それから今年は布バッグのイラストなんかも始めました。
ーーこれ絵皿にはどうやって絵を描くんですか。
私はラクヤキマーカーっていうのを使ってます。このペンでお皿に描いて、レンジでチンして焼き付けるというイメージです。
ーー絵皿だけじゃなくて、いろんなものに挑戦してるんですね。
それが実はそんなポジティブな話じゃなくて。絵皿とかだと、息子が落として割っちゃうんですよ。
飾るのが好きなのに、割れちゃうんですよ。そんなときにまた、デコパージュをお友達が紹介してくれて、デコパージュもやるようになりましたね。
ーーデコパージュってなんですか。
好きな紙を切って、無地のものに貼り付けるっていうハンドメイドです。
リメイクみたいなイメージです。
ーーなるほど。今はこれらの作品はどこで販売してるんですか。
ほとんどオーダーが多いですね。それと今年からは自宅教室もスタートさせました。
ーーここでやっているんですか。
そうです。実際自分が作品を作るのも楽しいんですけど、もっと、この「作ること」の楽しさも一緒に伝えていきたいなと思っているんです。
他にも自宅以外でワークショップも少しやってみたりと、いろんな方法でこの絵皿とかデコパージュの楽しさを知ってもらえたらいいなと思っています。
ーー始めた時から自宅でやる予定だったんですか。
いや、実はこれもそんなつもりはずっとなくて。
あるお知り合いが接骨院をやってて、そこで一回ワークショップで招いてくれて、やってみたんですけど、すごく楽しくて。
ーーワークショップ、自宅教室と、どんな声が多いですか。
やっぱり絵を書くことって大人になったら減りますよね。だから久しぶりに書くの楽しかった!とか言ってもらったり、自分で作ったものはもちろん世界に一つだけのものになるので、喜んでもらってますね。
ーーやってみていかがですか。
最初は出張ワークショップの時みたいに緊張しましたけど。やっぱり自宅でやっているのでみんながリラックスしてくれているのもいいかもしれません。
最高のものを作るぞー!というより、楽しんで作ろうみたいな雰囲気がすごくいい感じだと思います。
ーー毎月定期開催という感じですか。
いや、それがまだわかんない!臨機応変にやってます!笑
ーーパートをやるのに比べると、収入は不安定だと思いますが。
それはあります。ただ、精神的にもすごく楽ですし、私飽き性なので。
常になにか新しいことしたいって気持ちになるので、今はこのスタイルでいろんなことを、いろんな方に楽しんでもらえればと思っていますね。
ーーということは自宅教室もこれが最終系ではない。
もちろん。実際今度障害者施設からもワークショップのお誘いもいただいてますし、これから小学校の障害者学級なんかでもワークショップもやりたいです。
本当にいろんな人に楽しんでもらいたいですね。
ーーこちらもまた新しい作品ですよね。
そうです。ラクヤキマーカーのメーカーがやってるコンテストなんかに応募してると、次は絵の具での布バッグの作品が紹介されていたんですね。
なので、これ面白そうってことで始めちゃいました。
ーー本当にいろいろやっているんですね。
そうですけど、しばらくはこの絵皿とデコパージュと布バッグの三本柱で、技術を磨いていきます。
それを、老若男女幅広い年代の方に楽しんでもらいたいですね。
終始明るく、そして時にしゃべりすぎる池内さん。楽しくお話できた一時間でした。
波の少なかった結婚までの人生から、お子さんの病気で、家族みんなで大変な経験をしながらも、素敵な人たちとの出会いがきっかけとなり、前向きな姿勢でい続けられたことが、今のこのハンドメイドを楽しむ状態にまでなったんだと思います。
ここからは、自分がそういった楽しみのおすそ分けを多くの人に届けようとされています。
子育てでしんどくなっているお母さん達にも、趣味が見つからない人たちにも、「何気ない日常にそよ風を吹かせたい」と語ってくれました。
もっともっといろんな人に声をかけてもらって、いろんな場所でワークショップを開催したいので、ぜひお声かけいただければと思います。
話しているだけで、こちらも元気をもらえる。
ぜひブログやSNSも覗いてみてください。
A courant d’air
池内厚子