【コラム】わたしにとっての春(西坂玲加)
このところ、すっかり暖かくなりました。
お出掛けにいい季節ですね。
春といえどもやはり紫外線は気になるので、すぐ日焼けするわたしは出掛ける前に日焼け止めを必死に塗り塗り・・・・・・。
幸い主人に似てくれたらしい色白の娘にも必死に塗り塗り・・・・・・。「日焼けしないようぬーりぬり~♪」などと歌いながら塗っていますが、とても嫌がられます。
日焼け止めの質感が嫌だから?何をされているかわからないから?
あ、わたしが音痴だから!!??
「ああなの?こうなの?」と考えて、よくわからないなりに娘の表情やしぐさを読み取って、接する毎日。
「そうじゃないよ、ママったら!!」と思っているかもしれません。
言葉の通じない相手との生活は大変だなぁと思うのと半面、娘の立場になると思っていることを伝えられないのはつらいよねぇと思い、娘の伝えようとしていることを汲み取ろうと会話(?)にチャレンジしています。
先日、子育て支援センターで出会った友達と野間馬ハイランドへ行ってきました。
娘は、初めて見る野間馬に興奮!?・・・ではなく、無表情で少しの間眺めただけでした。
これから何回か見るうちに「お馬さんだ!」と認識するのでしょうか?
駐車場近くのベンチで待ち合わせましたが、授乳室やおむつを替える所はないよねと思っていたところ、坂道をあがったところにある「まきば館」に赤ちゃん用のスペースが用意されていました!
やはり、どこに行くにも授乳室やおむつ替えコーナーはあるか気になります。
赤ちゃん用のスペースは、どうしても場所を取ってしまうので煩わしく感じるかもしれませんが、このスペースがあることで助かる人は大勢いるはずです。
野間馬ハイランドにはまた行って、動物たちと触れあったり、木々や花を触ったり眺めたり、そのうち大きくなったら遊具で遊ばせたりしたいなと思いました。
そう、野間馬ハイランドにはたくさんの植物がありました。
木々には青々とした葉が茂り、春の柔らかな風を受け、そよそよと揺れていました。これにぴったりの言葉として「風薫る」というものがあります。
若葉の中を吹き渡る春の風が、そのにおいを運んできます。若々しさを感じる、爽やかな青っぽい葉のにおいです。
この言葉が好きなわたしは、幼い頃春が一番好きでした。
なぜなら、祖父母の営んでいたお菓子屋さんで、大好きな柏餅が食べ放題だったからです!!
小さい頃なら特に洋菓子を好きな子どもが多いと思いますが、わたしにとってこの柏餅は特別なものでした。
春だけしか食べられない限定品。「限定」という言葉の響きに魅せられて、毎年柏餅をたらふく食べていました。
毎年ゴールデンウィークは、こどもの日があることもあり、大忙しでした。
「孫がね、ここの柏餅やないといかんて言うんよ。」と近所のおばあさん。
「今日で帰るんやけど、お土産に買って帰りたくて。」と県外ナンバーの車から降りてきた若い夫婦と子どもたち。
「いつまでも元気で作ってくださいね。」と常連さん。
「じいちゃんとばあちゃんが作ったお餅は、こんなにたくさんの人を笑顔にするのか。」と誇らしく思い、わたしのじいちゃんとばあちゃんはすごいだろうと、進んで店番(という名のうろつき。)をして、「あら、お孫さん大きなって!かわいらしいねぇ。」と一日中褒めてもらえたのを昨日のように思い出すのが、この季節なのです。
旧東予市で祖父母が休みなく営んでいた店舗は、数年前に閉めることとなりました。
加齢と共に落ちてきた祖父母の体力を心配し、「もう今年で辞めよう。」と周りは言い続けましたが、「わしは餅をこねながら仕事場で死ぬんじゃ。」と職人気質の祖父。
人を笑わせることが大好きなユーモアあふれる祖父は、仕事に対して一切妥協することなく、店を閉めると決断するその日まで柏餅を作り続けていました。
そんな祖父の隣には、いつも献身的に支える祖母の姿がありました。
今、祖父は入院しています。祖父は昨年の9月、娘の産まれる一ヶ月前に緊急入院し、「今日明日が峠だ。」と医師から告げられました。
しかしそれを見事覆し、今は一日一日を生きています。
もうきっと、あの柏餅を食べられる日は来ないし、お店が開くこともないでしょう。
それでも、わたしにとっての春、「柏餅の季節」は、好きというよりずっと大きな意味合いを持つ大事なものとして心に生き続けるのだと思います。
西坂玲加
renica.badaabaans@gmail.com