ばりじんNo.52。消防士・藤本楓香さん 〜Job marche〜
原体験から一途に消防士の道に。
今年度から始まった「Job Marche 〜働けるいまばり〜」の記事が今日から次々と公開されます。
20名近くの、今治で働く女性を取材しました。ぜひ2月いっぱいは、この「Job Marche」シリーズをぜひお楽しみください。
ばりじん52人目の紹介は、今治では数少ない女性消防士さんの藤本楓香(ふうか)さんです。
素敵な笑顔の中に秘められている、自身の原体験からくる理想の消防士への憧れ。これからやっていきたいこと。今治では5%に満たない消防士の女性比率への想いなど、余すところなくお話していただきました。
ぜひ最後までご覧ください。
中学3年生の体験がターニングポイントに
小学2年生の時に今治に定住した藤本さん。そこから、消防士とは無縁かつ、運動が苦手で体力に自信こそなかったものの、中学生の時に立ち会った体験が、その後の行く末を決めることになります。
ーー女性の消防士さんってかなり珍しいですよね。
そうですね、珍しいと思います。
ーーどれくらいいるんですか。
今治だと、全部で200人くらいいる隊員の中で、5人ですね。
ーー2.5%じゃないですか。
そうなんですよ。女性比率をもう少し上げようみたいな動きもあって、いろんな市町村が5%を目標にってなってるみたいです。
ーー目標が5%ってよっぽどですね。
かなり少ないと思います。今治でもあと5人必要なんですけどね。
警察とか自衛官はもっと女性比率高いと思うんですけど。
ーーどんなきっかけがあって消防士になろうと思ったんですか。
私の場合は、まず中学校の時に職場体験みたいなのがあって、それで消防署に行ったんです。
その直後に家の近くに救急車が来ることがあって、近所のおじいちゃんが運ばれるシーンを見て「あっかっこいい。」って思ったんです。それがきっかけです。
ーーそこから目指し続けたってことですか。
そうなりますね。消防士一筋です。
ーー体力にも自信があったんですか。
いや、全然なかったですね。中学時代は吹奏楽部だったし、むしろ運動だいっ嫌いでした。
それまでは医者になりたいというくらいだったので運動とは無縁でしたね。
ーーそこから少しずつ変えていった。
高校に入ってからボート部に入ってからは少しずつ体力がついてきました。
他の競技だと中学でやっている人と差がついちゃってるので、高校からみんな同じスタートになるボートを選びました。
消防士一筋、高校卒業後すぐに就職
中学時代に決めたかっこいい消防士さんになるという目標は高校時代にもぶれることなく目指し続け、卒業後すぐに就職。まずはスタートラインに立ちました。
ーー高校時代も消防士になるというのはぶれなかったんですか。
全然ブレなかったですね。一直線でした。
ーーイメージとしては男性ばかりという職場に飛び込むことに抵抗は?
たしか広報かフリーペーパーで、女性消防士がいるのが紹介されていたんですよ。それ見て「一人いるならいけるやん。」って思ったので不安とかなかったですね。
ーーそれは強いですね。
そうですかね?なるって決めてたので、そこは全く気にならなかったですし、初の女性隊員とかでもなってたと思いますよ。
ーー実際になってみていかがですか。
4月に消防学校に入校して半年間講義や訓練をして消防の基礎を
ーー現場に配属されてからはいかがですか。
そもそも消防学校でも倒れちゃったりしてたので、全然まだまだ思ったようにできてないですし、全然理想とはかけ離れてますね。うまくいかないなって思うことが多いです。
ーー具体的にどんなことをされているんですか。
実は現場に出動していることってそんなに多くないんです。もちろん少ない方がいいんですけど。
ほとんどは訓練の時間が多いです。
ーーその中で得意不得意みたいなのってあるんですか。
私の場合は救急隊員なので、救急隊として経験をつん
逆に消防の部分だと、体力が必要なのは苦手ですね。ホース持って走り回ったり、どう展開していくかみたいなのは、やっぱり経験も必要だったりするので、まだまだ難しいです。
ーー消防士さんって火を消すだけじゃないんですね。
そうですよ。大きく分けると5つです。よくイメージにあるのは消防ですけど、その他にも救急と救助。それに、火事を未然に防ぐ予防活動と、通信指令という仕事に分かれています。
もちろん火事があったら消防車に乗って火消し作業はしますけど、それ以外では救急車に乗って現場に行って、病院に連れて行くまでの対応をするのは私たちなので、消防士って一口に言ってもやることは違ったりしますね。
ーーなるほど。救急車に乗っているのはお医者さんじゃなくて消防士さんなんですね。
そうですよ。この西消防署は、火事が発生したりすると消防車と救急車が同時に出動したりしますね。
救急車にお医者さんは乗ってないです。
息抜きは寝ることと外にでかけること
ーー今20歳だということなんですが、おやすみの日はどんなことされているんですか。
まずは寝ることですね。笑
勤務体系が少し変わってて、3日に1回の勤務で、朝の8時半から次の日の8時半までなんですよ。なので、1日で2日分働いているので、体を休めることが多いですね。
ーーなかなかハードな勤務体系ですね。
だいぶ慣れてきましたけど。
あと同期と遊びに行ったりもしますし、高校のボート部のお手伝いに行ったりします。
ーーすごい、勤務以外でも体動かしてるんですね。
動かすというよりは、練習する場所が玉川ダムなので、手伝いといいつつ、ボートの上で水に浮かぶ感じでぷか〜ってのんびりするのめちゃくちゃ気持ちいいんですよ。
救急救命士を目指し、女性隊員の増員を
ーーこれから、なにかやっていきたいことはありますか。
まずは火事とかの現場で足を引っ張ることがないようにすることですね。
そこから、私は救急をやりたいって気持ちがずっとあるので、救急救命士って資格があるんですけど、そこで活躍したいというのはあります。
ーー救急救命士になると何か変わるんですか?
救急救命士になると点滴ができたり、救急車の中でできることの幅が増えるっていう感じですね。
救急救命士とは?
国家資格で、救急車に同乗して、搬送中の急患の症状が急変したときに、気道の確保、心拍の回復、輸液処置などの応急手当を行う。一般の救急隊員と処置できる範囲が異なり、医師の指示のもと搬送中の手当てを行う。
ーーあとは女性隊員を増やしたりですか。
それもしたいですね。
はじめにも言ったと思うんですけど、女性比率はほとんどの市町村で5%以下なので。そこを愛媛県全体でももっと増やして、いろんな情報交換とか、働き方の提案とかができればいいかなと思っています。
去年くらいから愛媛県でもイベントをしてたりしてるので、少しずつ変わっていくかと思います。
ーーなるほど。大事なことですね。
それとやっぱり、自分が中学生の時に、その人を見て消防士という職業に憧れたように、次は自分がそんな存在になりたいです。
そこがずっと持っていたい目標です。
ーーそこにやりがいを感じる。
やりがいでいえば、「ありがとう」っていう言葉をいただくときもありますし、本当に危険な状態から回復したりした時は、やっててよかったと思うことは多いですね。
そういったのを積み重ねていくと、自分の姿に憧れてくれる人が増えるかなと思っています。
高校を卒業していち早く消防士になりたいと思い、その目標を叶えた今、理想と現実のギャップに挟まれながらも、目指していたかっこいい救急隊員として活躍する姿は美しく見えるはずです。
まだまだ足らない部分があるとは言いながらも、その高い志が今治の安全を守ってくれていると思うと、心強く感じました。
消防士 藤本楓香